非アルコール性脂肪肝炎に対するセマグルチド皮下投与(第2相臨床試験)

 糖尿病を合併した非アルコール性脂肪肝炎 NASHに対する治療薬としては、長らくピオグリタゾンのみが推奨されてきましたが、2020年の日本消化器病学会 NAFLD/NASH 診療ガイドラインより、GLP-1 受容体作動薬と SGLT2 阻害薬という 2 種類の薬剤が、糖尿病合併 NASHに対する治療薬として追加されました。糖尿病治療薬である GLP-1 受容体作動薬は、胃などの上部消化管運動を抑制する作用があり、食物の胃からの排出を遅らせて満腹感を与えることにより体重を減少させる効果が確認されており、NAFLD/NASH への治療応用が期待されています。GLP-1 受容体作動薬が血液生化学検査で肝機能を改善することはいくつか報告されていますが、肝組織の改善効果については十分なデータがありませんでした。

 著者らは、肝生検で確認されたステージ F1~F3 の肝線維化を伴う NASH 患者に対する 72 週間の二重盲検第 2 相試験を実施しました。患者は 3:3:3:1:1:1 の比で、セマグルチド(0.1, 0.2, 0.4mg)1 日 1 回皮下投与群と対応する プラセボ投与群にランダムに振り分けられました。主要評価項目は、肝線維化の悪化を伴わない NASH の解消で、副次的評価項目は、NASH の悪化を伴わない 1 段階以上の肝線維化ステージの改善でした。

合計 320 人の患者(うち 230 人がステージ F2 または F3 の肝線維化を有する)が、セマグルチド 0.1mg 投与群(80人)、0.2mg 投与群(78人)、0.4mg 投与群(82人)、プラセボ投与群(80人)に分けられました。 肝線維化の悪化を伴わない NASH の解消は、セマグルチド 0.1mg 投与群で 40% に、0.2mg 投与群で 36% に、0.4mg 投与群で 59% に、プラセボ群で 17% に認められました(0.4mg 投与群対プラセボ群で P<0.001)。一方、肝線維化の改善は、0.4mg 投与群で 43%、プラセボ群で 33% でした(P=0.48)。 体重減少割合の平均値は 0.4mg 投与群で 13%、プラセボ群で 1% でした。嘔気、嘔吐、便秘は 0.4mg 投与群でプラセボ群に比べ多く見られました(嘔気 42% vs 11%、嘔吐 15% vs 2%、便秘 22% vs 12%)。悪性新生物はセマグルチド投与群で 3 人(1%)報告され、プラセボ群ではいませんでした。全体では、良悪性を問わない新生物の報告がセマグルチド投与群で 15%、プラセボ群で 8% に報告され、特定の臓器での発生パターンは観察されませんでした。

PN Newsome et al. N Engl J Med 2020. DOI: 10.1056/NEJMoa2028395

 中規模の第 2 相臨床試験の結果ではありますが、GLP-1 受容体作動薬によって NASH の肝組織像が改善することが報告されました。残念ながら今回の報告では、肝線維化ステージの改善は確認できませんでしたが、より長期間投与することによって肝線維化が改善する可能性はありますので、今後のさらなる検証に期待したいです。

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