切除不能な肝細胞がんに対するアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法

 初期の肝細胞がんでは、肝切除術や経皮的焼灼術によって治癒する可能性がありますが、ほとんどの進行期の肝細胞がん患者は、予後が不良です。切除不能な肝細胞がんに対する全身薬物療法としては、マルチキナーゼ阻害剤であるソラフェニブとレンバチニブが現時点における第一選択であり、日本肝臓学会による肝がん診療ガイドラインのアルゴリズムにも記載されていますが、近いうちにそのアルゴリズムが変更されそうです。

 本研究は、世界規模の非盲検第 3 相試験で、全身薬物療法を受けていない切除不能な肝細胞がん患者を、アテゾリズマブ+ベバシズマブ群(以下アテゾベバ群)とソラフェニブ群に 2:1 の割合で無作為に割り付け、忍容できない毒性が発現するか、臨床的な効果が消失するまで投与を継続しました。主要エンドポイントは、 intention-to-treat 集団における全生存と無増悪生存です。

アテゾベバ群 336 例、ソラフェニブ群 165 例が登録され、アテゾベバのソラフェニブに対する死亡ハザード比は 0.58(95%信頼区間 [CI] 0.42~0.79,P<0.001)でした。12 ヵ月全生存率は、アテゾベバ群 67.2%(95% CI 61.3~73.1)、ソラフェニブ群 54.6%(95% CI 45.2~64.0)でした。無増悪生存期間中央値はそれぞれ 6.8 ヵ月(95% CI 5.7~8.3)、4.3 ヵ月(95% CI 4.0~5.6)でした。グレード 3 または 4 の有害事象は、アテゾベバの投与を 1 回以上受けた 329 例の 56.5%と,ソラフェニブの投与を 1 回以上受けた 156 例の 55.1%で発現しました.グレード 3 または 4 の高血圧がアテゾベバ群の 15.2%に出現しましたが、それ以外の高グレードの有害事象は多くありませんでした。

 この結果を受けて、日本では中外製薬が肝細胞がんに対する初めてのがん免疫療法の承認を取得し、近いうちに臨床現場で使えるようになる見込みです。

N Engl J Med 2020; 382:1894-1905