慢性肝不全について

ウイルス性肝炎、自己免疫性肝疾患、アルコール性肝障害や脂肪肝など、すべての慢性肝疾患は進行すると肝臓の中に線維が蓄積し、だんだんと硬くなっていずれ肝硬変になります。肝硬変のなかでも肝臓の機能が保たれている肝硬変を「代償性肝硬変」といい、肝臓の機能が十分にはたらかなくなった肝硬変を「非代償性肝硬変」といいます。非代償性肝硬変は慢性肝不全ともいわれ、人間が生きていくのに必要な肝臓の機能が足りなくなった状態をいいます。

そもそも、肝臓の主なはたらきとしては、①体に必要な蛋白の合成・栄養の貯蔵、②有害物質の解毒・分解、③食べ物の消化に必要な胆汁の合成・分泌があります。慢性肝不全になると、これらの機能の低下により、さまざまな症状がおこってきます。

例えば、蛋白質が作られなくなると低蛋白血症となり、浮腫(むくみ)や腹水が出現します。有毒なアンモニアの代謝が低下すると高アンモニア血症となり、意識障害(肝性脳症)をきたします。そのほかにも下図のようにさまざまな症状が出現し、最終的には、生きていくことが難しくなります。

肝不全の症状をやわらげるための治療はいくつかありますが、肝不全を治して健康な肝臓にもどす薬は現時点ではなく、完全に治すには肝移植しかありません。したがって、慢性肝疾患の早期のうちに対処して、肝硬変から慢性肝不全へと進行しないように治療を行っていく必要があります。

肝硬変、慢性肝不全における肝臓に残された機能のことを「肝予備能」といい、それを評価する指標として、Child-Pugh 分類などがあります(肝予備能評価スコア)。