脂肪肝について

脂肪肝は、食べ過ぎやお酒の飲み過ぎなどにより、肝臓に中性脂肪が過剰にたまった状態のことをいいます。肝細胞の5%以上が脂肪化すると脂肪肝と診断されます。

正常な肝臓と脂肪肝

脂肪肝は、アルコール性と非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease: NAFLD)に分類されます。NAFLDはさらに、肝細胞の障害や炎症を伴う非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis)と伴わない単純性脂肪肝(NAFL)に分類されます。

脂肪肝の分類

エタノール換算で男性30g/日、女性20g/日以上の飲酒量でアルコール性肝障害を発症しうるので、NAFLDの飲酒量はそれ未満と決められています。

アルコール量の換算

NAFLDの10~20%がNASHであり、治療をしない場合、5~10年でおよそ5~20%の患者が肝硬変になるといわれています。 さらに、年間約2%の患者が肝硬変から肝がんとなるといわれています。

NAFLDの予後 日本肝臓学会編:NASH・NAFLDの診療ガイド2015より

腹部エコー検査などの画像検査で脂肪肝がみられ、他の肝臓の病気でないことが確認され、飲酒量がエタノール換算で男性30g/日、女性20g/日未満であれば、NAFLDと診断されます。他の肝臓の病気との鑑別や進行したNASHの可能性がある場合は肝生検が行われます。

NAFLDの診断 日本消化器病学会編:NAFLD/NASH診療ガイドライン2014より

NAFLDでは、肝臓の線維化が進むほど死亡する危険性が高くなるといわれています。

肝線維化と死亡リスク
肝線維化と死亡リスク Dulai, P. S., et al. :Hepatology 65 ; 1557-1565, 2017

肝臓の線維化の程度を推測する計算式として以下の2つがよく用いられています。

FIB-4 index年齢、AST、血小板数、ALTから算出
=(年齢 [yr] x AST [IU/L])/ (PLT [109/L] x √ALT [IU/L])
>2.67  ・・・NASH (stage 3 or 4) の可能性が高い。
<1.3  ・・・NASH (stage 3 or 4) の可能性が低い。

NAFLD  fibrosis score (NFS)年齢、空腹時高血糖/糖尿病の有無、AST/ALT比、血小板数、アルブミン値から算出
=-1.675 + 0.037 x 年齢(yr) + 0.094 x BMI (kg/m2) + 1.13 x IFG/DM (yes=1, no=0) + 0.99 x AAR – 0.013 x PLT ( x 109/L) – 0.66 x Alb (g/dL)
>0.676  ・・・NASH (stage 3 or 4) の可能性が高い。
<-1.455  ・・・NASH (stage 3 or 4) の可能性が低い。

肝線維化進展例の絞り込みは以下のフローチャートに沿って行います。

日本消化器病学会、日本肝臓学会編:NAFLD/NASH診療ガイドライン2020

脂肪肝の治療は食事療法や運動療法などによる生活習慣の改善が中心となります。NASHで肥満のある方は、食事・運動療法により-7%の減量をめざします。糖尿病、脂質異常症、高血圧を合併している場合は、それぞれの疾患に対する薬物治療が行われます。これらの合併症がない場合は、ビタミンE製剤(ユベラ®)が用いられます。

NAFLDの治療 日本消化器病学会編:NAFLD/NASH診療ガイドライン2020より

食事・運動療法による適切な減量を行います。たとえば、体脂肪1kgは約7,000kcalに相当するので、それを30日間で減量する場合、摂取エネルギーとして白米2口分(1口80kcal×2=160kcal)を減らし、消費エネルギーとしてラジオ体操を約20分間(80kcal)行うと、1日当たりのエネルギー減少量が240kcalとなり、30日間継続で約7,000kcalの減量ができる計算になります。

食事・運動療法の実践 見て読んでわかるNASH/NAFLD診療―かかりつけ医と内科医のために(診断と治療社)より

近年、飲酒量によって規定されるNAFLDとは異なり、イベント発症や患者予後のリスクである肥満や糖尿病などの代謝異常を組み入れ基準とした新しい診断基準であるmetabolic dysfunction-associated fatty liver disease (MAFLD) が提唱されています。